オムニチャネルのトップランナーが語る、インバウンドマーケティング戦略

2014/08/26

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2013年末から急激に小売業界を賑わしている「オムニチャネル」というキーワード。実店舗やオンラインストアをはじめとする、あらゆる販売・流通チャンネルを統合しようとする、これら一連のムーブメントの立役者ともいうべき存在が、代表の武下真典氏率いるエスキュービズム・テクノロジーだ。

ECサイト構築パッケージ「EC-Orange」や、タブレットによるPOSレジ「EC-Orange POS」など、画期的な“ヒット”サービスを次から次へと市場に提起する同社は、いち早くインバウンドマーケティングに取り組んできた。

インバウンドマーケティング戦略のキーマンである同社マーケティング部の飯田健一氏と、そして代表の武下真典氏を訪問。「オムニチャネル」をリードし続けるトップランナー企業のインバウンドマーケティング戦略に迫る。

――まずは「オムニチャネル」の現状や貴社のサービスからお聞かせください。

セールス&マーケティング部 マーケティンググループ 飯田健一氏

飯田:ご存じの通り、「オムニチャネル」というキーワードは、昨年末あたりから急激に注目を集めるようになっています。ところが、このたび弊社が調査を進めてまとめた「オムニチャネル構築実態レポート」で顕著になったのは、多くの小売り企業がオムニチャネルに取り組みたいという意向があっても、組織体制や従来型の考え方が足かせとなり、なかなか実行できないという現状。

要するに、システム担当者サイドは熱望していても、店舗担当者にとっては「負担が増えるだけ」と躊躇している。温度差があることが明らかになりました。

その溝を埋めていくために、私たちは使い勝手の良いシステム、操作性の高いインターフェイスのソフトウェアの提供を進めています。私たちエスキュービズム・テクノロジーが目指すのは“小売りのミライをカタチにする”こと。主にオムニチャネルソリューション、O2Oソリューションを中心に展開し、ネット店舗とリアル店舗を連携させることでオムニチャネルを実現していきます。

――御社がインバウンドマーケティングに取り組まれた背景を教えていただけますか。

飯田:実を言いますと、弊社ではガイアックスさんとのお付き合いがスタートする以前から、インバウンドマーケティングに取り組んできてはいました。ところが、受注とリードの相関関係を調査すると、電話による問い合わせは受注率が低いなど、奧に潜んでいる問題がいくつか浮き彫りになりました。

それらを解決するために、より多くのトラフィックを集めるという当初の目的から脱却。より受注見込みの高い顧客からのトラフィック・リードを集めるには、顧客とのエンゲージメントを高めながら、顧客ニーズにフィットしたコンテンツを提供することが必要であると結論付け、ガイアックスさんのお力を借りることにしたのです。

そもそも、当社のソリューション自体が“小売りのミライをカタチにする”というもので、いうなれば、“顧客のミライを創造すること”です。そのため、インバウンドマーケティングの考え方とプロダクトの方向性は一致していました。

――具体的な取り組み内容を教えてください。

飯田:具体的には、WebサイトのSEOはもちろん、一番大切なのが顧客インサイトという方針を掲げ、営業の現場で上がった顧客の意見や疑問を一つ一つコンテンツにしていくとともに、ブログなどで、顧客が“知りたい”と感じるであろう内容を先取りして発信。より顧客目線でのコンテンツの増加に取り組みました。

月に一回、ガイアックスさんとのミーティングの場を設け、社内で持ちあがっていた懸案事項を議題に。提案いただいたタスクに関して、優先順位をつけながら、スピード感を持って取り組んできました。また、リスティング広告や、Twitter、FacebookなどのSNS、メールマガジン、プレスリリースなどでの拡散を行い、コンテンツを通して自社ソリューション・プロダクトの認知を向上させることにも注力。もちろん、ABテストを実施したり、SEOやEFOなどの観点からの地道な改善と検証も常時繰り返しています。

――インバウンドマーケティングの成果を、定量面、定性面ともに教えてください。

飯田:定量面では、2012年9月から計測すると訪問数は4倍、コンバージョンは目標対象の数の増減はあるものの、28倍近くに増加しています。

インバウンドマーケティングの目的は、“受注見込みの高い顧客を見つけること”ですから、より受注確度の高い問い合わせの拡大が進んだことは、ひとつの成果と捉えています。なお、ブログについては、最も人気のある記事で「いいね!」の数が600を超えています。これらの定量的成果は毎月、しっかりと右肩上がりに上がっていったという実感があります。

もちろん、満足しているわけではありません。今年は消費税増税など、トレンドに左右された状況でサイトへの流入が増えたとも考えられます。しっかりと見極めながら、施策を継続していきたいと思っています。

定性面では、ある特定のサイトだけではなく、別のサイトへの回遊も見られるようになりました。ひとつひとつのサイトのボリュームが大きくなり、ブランドサイトである「Orange Retail」や、最近ではプロダクトサイトとして「Orange Reserve」のサイトもリリース。ブログについても毎週リリースできており、メルマガ配信でのシナジーが生まれたと感じています。

――パララックスデザインの「Orange Reserve」サイトや、「プロジェクトに潜む7つの魔物」、「オムニチャネル構築実態レポート」など、 BtoBとしては先進的な取り組みをされていますが、どのように企画されているのでしょうか?

飯田:これらの取り組みは、いずれも代表の武下の案からスタートしています。代表の意向が、「顧客インサイトから考えたコンテンツの制作」というもので、常に“顧客の疑問に応える”や“顧客の利便性に応える”といった考えを中心に企画されています。

代表取締役社長 武下 真典氏

武下:そうですね。“顧客インサイトの重視”、すなわち、自分たちの思いこみではなく「本当にお客様にとっての良さって何だろう?」という視点から「お客様ならこう思うだろう」と、潜在意識下から引き出す作業からスタートしました。

例えば現在、リリースしたばかりの飲食店予約アプリ「Orange Reserve」のサイトについては、“飲食店の予約は、接客の始まり”と捉え、予約をしたエンドユーザーが飲食店に来店し、食事をして退店するまでの時系列の流れを、Webでどのように表現していくべきかを考えたのです。

そこでたどり着いたのがパララクッスデザインだったのです。上から順にストーリーを読ませるというスタイルであれば、わかりやすく一連の“流れ”が表現できる。デザイナーに“挑戦してみろ”と煽った結果、あのようなカタチになったのです。

――「予約から始まる感動接客」というキャッチコピーも印象的ですが。

武下:この「Orange Reserve」は、まずは高級飲食店を対象としたサービスにしようと考えていました。高級店のオーナーやそこで働いている方々がしっかり“腹落ち”するキーワードとは何だろうかと考えました。一般的な「おもてなし」「ホスピタリティ」という言葉を、私たちのようなソフトウェア企業が使用するのも、先方から見れば表面的に映るかもしれない。そこで熟考したうえで「予約から始まる感動接客」というキャッチコピーを用意して、その下のテキストで「マニュアルにない接客を組織に浸透させる」と加えました。この「組織に浸透する」という言葉が顧客、すなわち店舗オーナーのインサイトだと考えたのです。

マニュアルはありますが、マニュアル通りに接客してもオーナーは喜びません。それを超越してはじめて、店舗独自の接客が生まれ、そして来店したお客様は感動する。そのステージまで到達可能なツールを意図したのです。「Orange Reserve」以外のサービスも同様。

これまでのITの世界は、IT用語を駆使して「OSが~」とか「サーバスペックが~」と説明をしてきました。しかし、エンドユーザー側からすれば、それはどうでもよいことで、そもそもITを説明するのではなく、ユーザーの言葉でユーザーのメリットをうたわなければダメだと、私はこのIT業界に長いからこそ、そんな違和感を抱き続けていたのです。

表現は過激かもしれませんが、ある意味、ユーザー企業が騙されていた時代があったのです。そんな問題点を“魔物”というカタチで置き換え、IT業界の“あるある”を、顧客インサイト視点で語りたいというのが、「プロジェクトに潜む7つの魔物」というコンテンツのアイデアの原点なのです。

今までの市場って「良い製品を作ったから買ってね」という世界でしたが、今はそれほど単純ではない。モノを作っても売れない、機能が多くても売れない時代ですよね。ですから結局、事業や商品を通じて誰かを幸せにしないといけないのです。手前味噌ではありますが、今回リリースとなった「Orange Reserve」は、消費者を幸せにして、さらに飲食店オーナーを幸せにする仕組みなので、そこが最大強みだと思っています。

――ありがとうございます。最後に、今後、御社が注力していこうと考えているサービス、ビジネスについてお聞かせください。

飯田:マーケティング担当の立場からお話しさせていただくとしたら、ガイアックスさんのご協力のおかげで、現在、ある一定のリードは獲得できたと考えています。次の段階としては、リードナーチャリングを行い、良質なリードに育てていくことや、初めから良質なリード、具体的には見積もりを出すようなリードの獲得を増やしていくことが課題だと捉えています。具体的な施策もさることながら、もっと大きな目標として、ガイアックスさんと共に、既成のインバウンドマーケティングの概念を打破し、新たなステージへと突き進んでいければと思っています。

武下:間もなく新サービスの発表を行う予定となっていますが、オムニチャネルという枠組みの、消費者にもっとも近いラストワンマイルを解決するためには、ソフトウェアだけでは限界があると捉え、ハードの領域にも踏み込み、新たなサービスを展開していきます。

私たちは常にリアルな世界から問題を見つけ、それをITに置き換えてソリューションを提供する企業です。時代の風は読みながら、ニーズのない奇抜なものを作るつもりはありません。現在、消費者は物凄い勢いでIT武装化を進めています。ですから、消費者ともっとも近い位置にある小売りもテクノロジーの先端を走らなければならないのです。その手助けをすることこそが、私たちの存在意義と捉え、ビジネスを展開していこうと思っています。

※アイキャッチ画像:Designed by Freepik

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編集長
中村 竜次郎
制作会社などで広告制作にプランナー、コピーライター、ディレクターとして携わる。2011年に(株)ガイアックスのインバウンドマーケティング事業に参画。2016年よりビジネスマーケティング事業部 部長。
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創刊者
栗原 康太
東京大学社会心理学専修課程卒業後、(株)ガイアックスに入社。在学中の大学1年時より、BtoBに特化したインバウンドマーケティング支援事業の立ち上げに参画。現在、Q-LINK(https://q-link.jp/)責任者。
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